提案『鏡を見る発達』
子供達が鏡をじっと見る様子を不思議だと感じたことはおありでしょうか。子供達は鏡を見るという行為の中に幾つかの発達理由があり、それは年齢や発達段階によっことなります。子供が鏡を見るのは、「自分を知る」「社会と関わる」「遊ぶ」「学ぶ」といった自然な発達の一部です。今回は多くのお母様が見逃してしまうこの鏡との睨めっこの意味を子供の発達として解説してまいります。
それでは子供が鏡を見ることの理由を解説してまいります。
1、キラキラを求めて
生まれた直後はぼんやりとしていた視力が生後2ヶ月の頃になると日の光を目で追う仕草も見受けられ、やがてキラキラと光るものに興味が出て見つめるようになります。自ら鏡を見ることはありませんがこの時期に重要なことは日の光を視覚で感じキラキラを求めるようになることが発達の中に組み込まれているのです。オルゴールメリーやベビージムなどについている小さな手鏡を見るようになるのも生後6か月以降に鏡を見る発達に繋がっていくのです。
2、乳児の自己認識の発達(自分の姿に興味を持つ)
ハイハイをする乳児には敢えて大きな鏡を使用した取組みを促しています。小さな月齢の乳児は鏡に映る自らの姿を見て「なんだろう?」と見つめ、やがて鏡に映った自分の姿を「別の子」だと考え、やがて何度も鏡を見ることによってだんだんと「この鏡に映る姿は自分なんだ」と認識し自己認識が持てるようになります。この自己認識の発達はとても重要で乳児期に働きかけをせずとも1歳半〜2歳ごろに始まるとされています。つまり子供の成長には自己認識の発達は組み込まれ大変重要なものなのです。
私も鏡を使う指導をしていますが「幼い頃から鏡を見せると自閉症になるのでは?」という情報を見かけたと質問を受けることもあります。がしかし医学的根拠は何もありません。ただ一部の発達障害の子供には鏡やショーウィンドウ、窓ガラス、起動していないパソコンに映る自らの姿に興奮する様子が見受けられる特性があります。しかしそれは否定するものではなく、この特性を活かして療育に鏡を取り入れる方法もあるのです。
3、動きと反応を観察している
鏡に映る自分自身の姿(鏡の中の自分)が自分らの動きと完全に連動して動くのが面白く感じるようになります。すると自ら鏡に近寄ってじっと見つめ何度も動きを確認している乳幼児の姿が見受けられるようになります。乳児はあまり大きな動きはしませんが鏡に手を伸ばしたり、顔を近づけて鏡を舐めたりの行動が見受けられます。
また1歳半以降にこの様子が見受けられた場合は表情を変えたり、手を振ったりして、その反応を見ることで因果関係を学んでいきます。早い段階で鏡を見せるか、自然に発達が出てくるのを待つのか賛否両論ありますが、しっかりと鏡を用いて因果関係を実体験で学んでおき、その後幼児期の鏡映像を学部ことに繋げたいと考えます。
有名な「鏡映像自己認識テスト(ルージュテスト)」では、額に赤い印(シール)をつけて鏡を見せ、自分の顔の印を触るかどうかで自己認識の有無を判断することができます。
4、好奇心・遊びの一環
乳児期は鏡の中に映る自分の姿を見て「誰かいる!」と最初に思い、空想力が高くなる3〜4歳の頃には鏡に向かって話しかける子供もいます。その様子にお母様が驚愕したり心配することもありますが、空想の世界を楽しんでいる発達期には鏡越しの自分に話しかけて遊ぶことも少なくありません。多くは一時的なものである程度満足すると辞める方向に進み心配する必要はありません。しかし長くその遊びをすることは人との関わりの中で育つコミュニケーション力を育てることに影響が出てしまう可能性もあります。鏡遊びに抵抗がある場合は人形遊びやおままごと、家族ごっこなどのごっこ遊びを促すことも一つの方法です。
また遊びの一環として鏡の前で自分の顔や動きがそのまま映る鏡は、子供にとってとても不思議で面白いものです。表情を変えて遊んだり、口を窄めたり大きく開いたりと変顔をしたり、手を振ったり足を動かしたりポーズを取ったり、ダンスをすることが単純に「楽しい」からであり、他人の表情や行動を真似る模倣行動も含めて鏡は自分を使った遊び道具にもなり、想像力や身体の動きを鍛える要素にもなります。
さらに子供は鏡の中の世界が不思議に感じ好奇心を育てて「どうなってるのかな?」と鏡に映ることから何かを導き出そうとしたり、「こういうことだったんだ」と因果関係を理解し思考を深めます。鏡を用いた遊びは幼児のメンタルローテーションと言われる「物を頭の中で回転させるイメジ力」を鍛え、図形認識力の基礎を身につけることに繋がるのです。よって川や池の水面に映る物を見たり、鏡に映る時計の針や文字がどのように映るのかなど日常の中で多くのことを発見し好奇心を育ててほしいと考えます。
5、感情の理解や表現を学ぶ
自己を鏡の中で認識する自己認識は単なる知覚だけではなく、感情や社会性の構築と深く関係しています。まず獲得するのは自分と他者の区別ができるようになり、ママとぼく(わたし)は違う、他者への共感を育み、家族以外の人を認識し社会との繋がりを広げていきます。
そして鏡に映る姿が自分だと理解した子供は自分の表情を見て、笑った顔・怒った顔、すました表情などを作り出して感情の表現を覚えていったり、可愛さ、恥ずかしさ、誇らしさ、勇ましさなどの自己認識感情を育て、社会の中で自分自身がどのように見られているのかの理解も進みます。また鏡で泣いたり笑ったりする表情や動作を自分で確認することや大人の行動の真似や模倣を通して社会性や感情表現の発達にも繋げていきます。
6、言語能力の発達
この鏡を用いての自己認識力は言語能力の発達にも深く関係しています。自分と他者の区別がつくようになると「ぼくは」「わたしは」と発言し、そして他者のことを「〜くん」「〜ちゃん」「おじいちゃん」「おばあちゃん」など一人称から使い始めるようになります。そして自分を表現する力を育てやがて他者を理解する力をを育んでいきます。その段階で人に対しての興味も出てきますから、話しかければかけるほど新しい言葉をキャッチする力が育ち、繰り返し耳にした単語はその意味を理解するようになります。この段階でカードを用いて名詞のインプットの強化をお願いし単語数を増やす方向に舵を切ってもらいます。
7、自己肯定感や外見への関心
幼児期〜小学生くらいになると、自分の髪型や服装などの外見に関心を持ち「かわいい」「かっこいい」を鏡で見て気にし自分の髪型や服装を確認するようになります。これは自己イメージやアイデンティティの芽生えの形成となります。この時期にコンプレックスをあまりにも気にしだすと自信が持てず自己肯定感を下げ気味になるので、できるだけ長所に目を向けることをお勧めします。鏡を見るこの時期には外見が全てという時期ですからどの子供にもその子なりの素敵な笑顔があることを伝え、鏡を見た後は必ず笑顔で目を離すことができるように自己肯定感を高めてほしいと考えます。
来週の提案記事は鏡を見るという流れを受け『身支度の薦め』となります。こちらも乳児期から就学期以降についても触れた参考になる記事になっているので是非読んでいただきたいと思います。
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