提案『浮世絵七夕で得るもの』

明日から7月、気の早い生徒さんは先週から七夕飾りをいつ出すのか短冊はいつ描くのかと訊ねてきました。という訳で七夕に関する行事育を今週行うこととしました。今回はこれまでに提案記事化した2022年7月4日『七夕を楽しむ』(記事がこちら)、2023年7月3日『七夕を楽しむスイカ素麺』(記事はこちら)とは角度を変えて、江戸時代で花開いたという七夕行事や浮世絵を通して子供達の読解する力や理解する力を育てて古いものから学ぶ力提案してまいります。

                       歌川国貞『七夕の節句』『豊歳五節句遊』


1、七夕の由来を要点をまとめる練習を。

多くの絵本を読んでいる子供達でも読んだ絵本の要点をまとめることができるとは限りません。何度も繰り返し読んだ絵本を時系列に従い話をまとめていくトレーニングも国語力を高めるためには必要だと考えます。読んだばかりの絵本のあらすじを言わせたり、要点をまとめさせることはするべきではないと思いますが、同じ作品を繰り返し読んだものは要点をまとまる練習を入れてはどうでしょうか。今回は私なりに七夕物語をまとめてみました。トレーニングに役立ててみてください。

『天の川のほとりに住む天帝の娘織姫は機織りを熱心に行い美しい布を織り続けていました。父天帝は織姫を案じ真面目で働き者の牛飼い彦星と引き合わせます。二人は出会ってすぐに恋に落ち結婚しましたが互いを愛しすぎ仕事を疎かにしてしまいます。織姫は布を織らず、彦星は牛を追わなくなり天の川は荒れ果て、これに怒った父天帝は二人を天の川の両岸に引き離し会うことを禁じました。しかし織姫の悲しむ姿を見た天帝は心を痛め年に一度七月七日の夜だけは会うことを許しました。

ただし二人が会うためにはカササギが天の川に橋を架けなくてはなりません。しかしこの日に雨が降って天の川が増水してしまうとカササギは橋を架けることができず、二人は会うことがで気なくなります。そのため人々は七月七日の夜に晴れることを願い、笹の葉に願い事を書いた短冊を飾り織姫と彦星が再会できるように祈るようになりました。』




2七夕の変化を浮世絵から読み取る

当時は女子の女子の織物や裁縫の上達を願う祭りとして笹には五色の糸や小袖を飾ったとされています。我が家でも子供が小さい頃は5色の刺繍糸をアレンジして笹に飾ったり、幼稚園で取り組んできた縫さしの裏に願い事を書いて飾ったりもしました。絵画集をたくさん見せていたので渓斎英泉(けいさいえいせん)の以下の浮世絵『十二ヶ月の内 七夕』を見て糸切り鋏に気づいた子供がきっかけで5色の短冊ではなく当初は5色の糸であったことを知ったのです。知らなくても良いことでしょうがなぜなのかという疑問を抱くことは関心や興味を持つことに繋がるので好奇心の芽は確実に育ちますし、自然と当時の江戸の生活や文化の知識は身に付きます。私は一般的に見て知らなくても良いことであっても知っているということは強みだと考えます。そしてその知識の点と点が何処でどのように結び付きその子の中で結実するかは未知数です。その種まきができるのはやはり家庭ではないかと考えます。




3、七夕を日本文化として

日本ほど外国から入ってきたものを自国でより良いものにする力のある国民はいないと思います。この七夕も中国から由来したものですが日本独自に変遷をしていきます。例えば七夕は七月七日ですが、実は七月六日に子供達の文章と文字の上達を願う『硯洗い』という風習が残っています。私がこの事実を知ったのは小学校4、5年製だったと思います。書道を習い事にしており先生が「今日は硯を洗います。」とその意味を説いてくださいました。大学まで書道を続けましたが幼い記憶が紐解けたのも子供とともに見ていた周延作『江戸砂子年中行事 七夕之図』でした。左端の下に硯と筆があるのが確認できます。書道教室に通っている生徒さんは七夕の前日に笹竹に飾り吊るす短冊を書にしたため、硯や筆を洗う硯洗い体験してみてはいかがでしょうか。すると日本で行われた七夕の意味を理解することに繋がるでしょう。浮世絵は色々なアイテムが散りばめられているので細部を細かく見ると楽しくなります。

また日本では笹竹を飾る風習がありますが中国にはそのような風習はありません。つまり七夕が日本独自の発達を遂げているのです。以下の浮世絵は歌川広重による『名所江戸百景 市七夕祭』と題された作品ですが、屋根の2階に高い笹竹を立て武士の家では幟(のぼり)や吹き流しを、商家ではそろばんや大福帖と盃、一般庶民の間でも瓢箪やスイカなどを飾ったとされ七夕を祝うものも身分により変化しています。しかし江戸時代は商人が力を持っていたためこの浮世絵からも当時の江戸社会の一端を知ることができます。浮世絵はその時代の時代背景を読み解くことができるため日本史の江戸時代を理解する助けにもなります。



4、七夕を文学的に過ごす

一般的に女子の織物や裁縫そして子供達の文章や文字の上達を願うことと変化していった七夕祭りですが、宮中では1つのお題で短歌を作る歌合わせの歌比べが行われており歌人の力量が競われていました。これが現代の短冊に願いを書くということに伝承されていると思います。今年の七夕は短歌を詠み短冊に記しても良いかもしれません。

以下の浮世絵は三代豊国『当世葉唄合』です。女性がどのような短歌を書き留めたのでしょう。そこから古き時代の人々の恋しい思いを詠んだ短歌の世界を覗いて現代人と心情の変化があるのか読み取ってみても楽しいかもしれません。例えば紀貫之の「朝戸あけて ながめやすらむ織姫は あかぬ別れの空を恋ひつつ」から西橋美保氏の「この家を 出ていきたいと 七夕の 星につくづく 願ひをかける」まで幅の広い恋の捉え方があることに驚きつつ、色々な恋を詠んだ作品に触れる甘美さを味わってみてはいかがでしょうか。




5、子供と楽しむ七夕に

この歌川国貞『豊歳五節句 七夕』の浮世絵に見られるように七月七日は、季節の変わりめに無病息災、豊作、子孫繁栄を願う五節句の中に含まれています。ですから子供いるご家庭が行うものとして捉えられているようですがそのようなことはなく、時代の変遷とともに子供が行うものとして定着したということでしょう。

下の浮世絵は林司馬『七夕』で昭和の時代の七夕の様子です。着物こそ着る日常的に着る機会はないと思いますが浴衣を着てその日一日を過ごすことも趣があって良い思い出になるかもしれません。

レッスンでは短冊に願いを書くことを毎年行っていますが、短冊を書くよりも七夕飾りを作りたいという声が生徒さんたちから上がります。ご自宅で一から笹竹作りの工作をしたり、アレンジ短冊を作ったり、色々な七夕飾りに挑戦する、素麺料理を作ってみたりと楽しんで見ることも楽しいのですが、七夕の夜にベランダや庭に出て夜空を眺めて頭に浮かぶことに思いを馳せる豊かな時間を設けることもまた一味違う七夕の日になります。


今回は七夕に関する浮世絵を取り上げましたが、七夕浮世絵に限らず全ての浮世絵が江戸から昭和にかけての時代や社会、風俗、文化を反映した日本の伝統芸術であり、当時を知る貴重な資料であることは言うまでもありません。子供達が浮世絵を通して当時の生活様式や価値観、社会構造を理解し学びへと繋げることができれば、絵を読み取る力や思考力、表現力を身につけることもできます。最後の作品『星まつり』は今週金曜に取り上げる偉人『竹久夢二』の作品です。偉人記事もお時間があれば覗いてみてください。

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