絵本『ウミガメと少年』
明日沖縄にとっては先の大戦で亡くなった戦没者を慰霊する日であり、非遺産な悲劇が再び起こらないよう恒久平和を願う日でもあります。明日は沖縄県内の学校はお休みですがその意味をご家庭でもしっかりと伝えて意義ある日にしてほしいと考えます。
今回取り上げる作品はウミガメと沖縄の少年の視点で平和と戦争捉える作品です。『火垂るの墓』を描いた野坂昭如氏の手による作品です。すでに小学校3年生の教科書で取り上げられている作品であり、吉永小百合さんによる朗読も行われている作品でもあります。またジブリの美術監督もされていた男鹿和雄氏の挿絵が沖縄らしさ、海の美しさ、戦争の惨さも描き出しています。
冒頭はウミガメの視点で始まり、次に戦禍で祖父母両親を亡くした孤独な少年の視点で物語が展開していきます。海の中の静けさと陸での艦砲射撃の激しさの対比、種の保存の本能に従い命を繋いでいくウミガメと人の命が失われていく人間世界の愚かさ、平和な時代にウミガメを保護する気持ちを持っていた少年が戦争という忌まわしさの中で割れたウミガメの卵を貪り尽くす様子など多くの対比を通して平和とは何かを考えることができる作品です。
またこの絵本にはもう一つ特徴があり裏からは英語で物語が綴られておりイラストも日本語バージョンとは異なります。最後はとても切なくなる展開で少年を何かを思い海に抱かれちったのかを想像し平和とは何かを考えてほしいと思います。
最後に中表紙のグンバイヒルガオは沖縄の浜辺で目にすることもだいぶ少なくなりましたが、方言でアミフィーバナもしくはハマガンダーと呼ばれ花言葉は絆です。家族の絆、友達との絆、知人との絆、名前も知らないいま隣にいる人、社会、国、世界と同絆を作っていくのかなどを考えると戦争なんて不要なものかもしれません。また和名のグンバイヒルガオのグンバイは、相撲の行司が持つ勝利を判定する軍配がグンバイヒルガオの葉に似ているとしていることから由来しています。愚かな戦争を起こす人間の世界をグンバイヒルガオは80年前にどのようなに見ていたのでしょうか。軍配を下すまでもなく愚かな人間の行いに無言の抵抗をしていたかもしれません。
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